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最新のお知らせ

魚の群れ news
一般社団法人あじいる

 今日、10月12日で、昨年の台風19号からちょうど1年になります。あの時、台東区の避難所で住所不定の方が避難を拒否されたため、私たちは、台東区危機災害対策課との話し合いを重ねてきました。これまでの経緯は、こちらのページでご覧いただけます。

 先週の火曜日(10月6日)に、私たちは、台東区役所に出向き、災害対策の改善を求める要望書を提出してきました。危機災害対策課長と課長補佐が要望書を受け取り、要望書の内容について話し合いました。

 まず、要望書の内容を読み上げた後に、私たちが独自で行ったアンケートの結果を伝え、当事者の視点から避難所を改善してもらえるようお願いしました。

 すると、予め私たちの要望書を読んでいた台東区側から、要望書の内容を考慮して修正されたチラシの案が配られました。それが、こちらです。

 修正前は、台東区役所と区民会館しか避難場所として掲載されていませんでしたが、私たちの要望書に沿って、台東区内の全ての避難場所も掲載されました。

 でも、注意事項は、ところどころ修正されたものの、全て残ったままです。以下、注意事項に関する問題点です。

 ・食べ物・飲み物を提供しない?

 台東区が新たに避難場所として開設する台東区役所と区民会館は、「避難所」ではなく、緊急的に身の安全を確保することを目的とする「避難場所」となり、食べ物や飲み物の提供する必要はないというのが、台東区側の根拠となっていました。災害対策基本法で、「避難場所」は、より切迫した災害の危機から逃れるための場所とされ、「避難所」は災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させる場所とされています。

 私たちは、路上生活されている方たちは、普段から食べ物や飲み物を入手するのが困難な状況にあることを考慮して、最初から2箇所を「避難所」として指定することや、備蓄を提供することを台東区に要望しました。しかし、「区役所周辺が浸水する可能性が低いため、避難所には指定されない」「備蓄は、物流が途絶えるなどの状況に陥った際に提供するもの」「路上生活者以外の住民にも食べ物と飲み物を持参するようにお願いしているので」という趣旨の回答しか得られませんでした。

 ・荷物を持ち込めない?

 私たちから、路上生活をしている人たちにとって、荷物は全財産であり、それを持って避難できないということはありえない、と伝えました。その結果、台東区は、「ボストンバック程度であれば、避難スペースに持ち込み自己管理してください」という文章に修正しました。これについては、改善が見られました

 ・継続的に台東区に住んでいないと避難できない?

 私たちがこれを問題視する理由として、路上生活を強いられる方たちの中には1箇所に長期間滞在できる人たちばかりではないということがあります。上野駅や公園では、遠方の無料低額宿泊所から逃げてきたばかりという人たちに会うことがよくあります。そのような人たちにとって、「台東区内で路上生活されている」という条件は大きなハードルになります。

  これに対して、台東区側は、「台東区の避難場所なので、台東区の住民向けということをチラシに記載しているが、実際に生活していない人でも避難してきたら受け入れる」と回答しました。それならば、最初からこの文章を入れる理由はないのでは?と質問すると、「他の台東区の住民のために、この文章は削除できない」という回答でした。つまり、台東区としては、「路上生活者を受け入れるけれども、あくまでも台東区<住民>に限定します」といって、少しでも区民の不満を解消する目的があるのです。

 ・福祉事務所に相談しなければいけない?

 「今後の生活についてお考えの方は、台風通過前、福祉事務所に相談してください」という注意項目は、一見すると、親切な情報提供に見えるかもしれません。でも、台東区内で路上生活されている方たちにお話を聞くと、福祉事務所に行きたくないという人がたくさんいます。その理由は、福祉事務所に相談に行っても嫌味を言われたり、劣悪な環境の施設に送られたりするから等、様々です(私たちが生活保護申請の同行支援を行っているのは、そのためです)。


 これを伝えたところ、この注意項目は、「2カ所の避難場所では、宿泊等の生活相談を行います」という文言に修正されました。


 また、実際に、この避難場所では、区内を拠点とするNPO法人と連携して、生活保護制度によって利用出来る宿泊所への案内がなされるということです。このNPO法人について情報公開を求めましたが、まだ協定を締結していないということで、教えてもらえませんでした。

* * *

以上が、今回の要望書に関する話し合いの内容です。

 また、これに加えて、新しい避難場所について明らかになったことがあります。それは、連絡先がないと、避難スペースに入れないということです。

 ・避難者をトラッキングできないと玄関にしか入れない? 
 今後新しく開設される台東区役所の避難場所は、1階部分のスペースを利用することになります。しかし、メールや携帯電話などの連絡先がない人については、コロナウイルス感染のトラッキングができないので、中の避難スペースに入れず、玄関で椅子に座ってもらうことになるということです。

 これを初めて聞いた私たちは、一人一人の命を守ることが優先なのに、統計上のクラスターを回避することを優先し、避難スペースから排除することを問題視しました。路上生活者には、連絡先を持っていない人が多いのはもちろん、60代〜80代の人が多い。その人たちが、雨の中濡れて避難してきたのに、玄関で椅子に座るしかできないのでしょうか?

 これについては、私たちの指摘を受けて、台東区も再度検討するということでした。

様々な人を包摂する台東区として、その行政として、胸を張って明言して欲しい

  今回の話し合いを踏まえて、台東区には再度チラシの内容などを検討していただき、10月20日までに文書で回答をいただくことになりました。私たちの声に耳を傾けて、実際にチラシを修正し、今後も検討を重ねるという台東区の姿勢に、希望も感じます。

  マジョリティの立場にいる人間が想像する以上に、台東区の作成したチラシの文言に敏感に反応した人が実際にいます。そもそも差別を受け続けた人たちにとって、避難所は行きたくない場所でもあるのです。でも、私たちは、本当に命の危険がある時には、避難して欲しいと思っています。そのために、ハードルになるものを取り除いて欲しいのです。

   今回の話し合いで、台東区から「このチラシは区民の方たちも読むもの。区民の方たちと異なる対応をすると、混乱や様々な反響を招く」と言った趣旨の回答が何度かありました。それが「役所としての」立場であると。でも、私たちは、路上生活者の生活状況や、その視点から配慮した避難所を作っていく必要性を説明していくことが行政の役割であると考えます。

  路上生活者に限らず、外国籍の方や障害を抱えている方など、様々な人を包摂する区として、すべての人の命を守るということを明言して欲しいと思います。区民から異論が出る場合には、「台東区は、すべての人の人権を優先する」と役所として胸を張って言って欲しいと思います。